ケミカル用品比較実験

ワイヤーの潤滑にはなにがよいのだろう???

各潤滑剤のカタログなどにはあれこれゴタクが書いてありますが実際その通りとは限りません今回は少々厳しい条件でワイヤーをぐるぐる巻きにして各潤滑剤の性能を見てみましょう。
実験方法はシマノ純正ブレーキアウターを1,500mmにカット。両端の整形を行ってから各潤滑剤を入れシマノ純正ステンレスブレーキインナーワイヤーを入れた。
抵抗を出すため直径約100mmにぐるぐる巻きにしてタイラップで固定、手で引っ張って動きを確認した。

潤滑剤無し なるほどな重さ。しかし完成車の多くはこんな感じで組んでいるのだろう。ワイヤーがシマノ純正なだけましだ。
レスポマシンスプレー(チタンスプレー)
レスポマシンスプレー(チタンスプレー)
チタン潤滑剤、10~30ナノサイズの真球状超微粒子チタンと超強力油膜形式RESPOの融合。
値段では文句無しのキング。
それなりに軽くなるがワックスやSLほどには軽くない。105と同等といった感じか。今後の耐久性を見たい。
シマノデュラグリス
シマノデュラグリス
シマノ純正グリス リチウム系 重い。論外である。使用量を減らせばもう少しましになると思うがいずれにしても局所的に使う以外に使い道はないだろう。
フィニッシュラインクライテックワックス
フィニッシュラインクライテックワックス
デュポン社製先進オイルクライトックスを配合したワックス潤滑剤。テフロンより粒子が細かく金属とこすれても剥がれにくい。 良好である。当社で推奨している物の一つ、不安材料としては溶剤が悪さをしないかと思うのだが今のところ問題なく運用できている。もちもSLより良さそうなのだがこれはあくまで経験から言っているだけで明確に言い切れないところがある。今回の実験でこのところをはっきりとさせたい。
ワコーズSL(シリコン)
ワコーズSL(シリコン)
シリコンスプレー。サラサラ系の潤滑剤で剥離材などにも使われている。溶剤がいっさい入っていないのでその点でも好感が持てる。 良好である。少なくとも現時点では一番良く潤滑出来ている。後は時間がたったり頻繁にこすって持ちがどう変わるかを検証したい。ワックスと違ってスプレーなのでワイヤーインジェクターが使えるのもグットである。
ワコーズフッソ105
ワコーズフッソ105
究極といわれてはいるが未だきちんとした使い方が定まっていないケミカル。このままだとDATのような存在になってしまうような。しっかりしろよ究極くん! イマイチ潤滑出来ているか不安な動き。やや抵抗があり金属がどこかに当たっているような気がする。

ワコーズとフィニッシュラインの潤滑剤の使い分け方

数ある油脂の中から結局どれを使えばよいのかとの問い合わせが多いですが答えは一つではありません。下記は参考に。
詳しくはスクールをご利用ください。スクールを利用すると適切な油脂の使い方は本ではわからないことが多いと実感できるでしょう。

メーカー&商品名 粘度 チェーンに使用したときの耐久性 チェーンに使用した場合の汚れの付き方 あえて欠点を言えば
ワコーズ ラスペネ
ワコーズ ラスペネ
小、すぐ流れてしまうので、クリーニングも容易 チェーンに使用した場合には耐久性のなさを明きらかに感じる。一日の走行が20km以上の人にはチェーンオイルとしては勧められない。
フィニッシュラインテフロンプラスドライルーブ
フィニッシュラインテフロンプラスドライルーブ
小だがラスペネよりは付く テフロンの粉が残るので気にする人はいるかもしれない。
ワコーズ メンテルーブ
ワコーズ メンテルーブ
粘度を思えば小、噴いた後はウエスで余分についた分は除去する 量が少ない。様な印象のあるカン。実際安くはないな。
フィニッシュラインクロスカントリーウエットルーブ
フィニッシュラインクロスカントリーウエットルーブ
すぐ黒くなる。ふくらはぎにチェーンリングの模様をつけたかったらこれ。付いた汚れを放置するとクリーニングは大変だ。 雨天の通勤やマッディなコースを走る人には向いているがそうでない限りはメンテルーブで間に合うはず。クリーニングと注油も頻度を高くおこなわないといけない。細かい隙間にしみこますような用途には不適。
フィニッシュライン クライテックワックスルーブ
フィニッシュライン クライテックワックスルーブ
ドライ状態のまま潤滑のため触るとワックスの感触はあるが粘度は感じない。 ワックスが付いている印象はある。汚れは付きにくい。セルフクリーニング効果も期待できる。輪行を頻繁にする人や折り畳み自転車を折り畳む人にはよいだろう。 他の製品と違いワックスでの潤滑であるのでいまいち潤滑の具合がとらえにくい。
使い方は独特。

ワコーズとフィニッシュラインの潤滑剤の攻撃性について。

このように容器に各潤滑剤を入れて試験片(虫ゴム&プラスティックあえて耐油性ではない物を使用)を入れた。
溶剤が乾いてしまうクライテックは途中で液を随時追加した。
ワコーズとフィニッシュラインの潤滑剤の攻撃性について。

一時間後の虫ゴムの状態。左端の元の状態からどれも変化しているのが分かる。とくにラスペネと、クライテックワックスは変化が大きい。ゆるいものほど浸透するのだろう。
一時間後の虫ゴムの状態

実験前に撮影したプラスティック片。ごらんのとおりアイスのさじである。ほぼ等分になるようにニッパーでカットした。
実験前に撮影したプラスティック片

数時間では変化が見られなかった。これは4日後のプラスティックの状態。虫ゴムと同様ラスペネと、クライテックワックスの変化が大きい。割れたのはふき取るときの物。自然に割れたわけではない。しかし。アイスクリームのさじが容易に割れるはずもなく明らかに潤滑剤による劣化が認められる。
 参考にスピンドル油(いわゆるミシン油)とクレCRC556もつけてみたがどちらも変化は認められない。
 クライテックワックスはワックスを溶かしている溶剤が悪さをするのであってワックス自体がプラスティックを痛めているのではないだろう。乾きも早いので通常の使用環境ではすぐ乾いて影響はほとんど出ないはずである。CRCは影響が出ると読んだのだが意外な結果となった。
数時間では変化が見られなかった。

ワコーズとフィニッシュラインのクリーナーの攻撃性について。

ディグリーザーなどにこの商品はゴムプラスティックを痛めませんとか表示がある物があるが実際にはまったく痛めないわけには行かないのだ。
下の写真は各クリーナーに虫ゴムを浸した物。左端の物と同じ長さにすべて切られた品だったのがつけた後はごらんの通り。
自転車パーツで油と触れそうな部分の物は耐油性を考慮した物になっているのでこのように極端な結果は出ないが参考にされたい。
この結果からも運用するときにはあまりクリーナーと樹脂、ゴムのたぐいが長時間にわたって接触するのはNGであるのがわかる。ワコーズのスーパージャンボはこの中では気化する速度が速く実際の使用時には悪影響が比較的少ないだろう。それでも気になる場合には同社の速乾性クリーナーであるBC-9を使用されたい。フィニッシュラインの2商品はほとんど気化する兆しを見せない。使用時には要注意だ。

こんな風に実験いたしました。



クレキャブクリーナー 思ったより影響が少ない。以前とは成分が変わったのか??
10年くらい前までのこの商品はゴムプラスティックにかけると明らかに対象物を痛めていたのだが???
トリフローディグリーザー 変化は見られない。残ってもゴムには影響がなさそうである。
 スプレータイプは泡状に出てくるのでスーパージャンボのように吹き飛ばしてのクリーニングは不可。
ホーザンオーバーホールクリーナー 影響はきわめて大きい。ウリ文句のゴムプラスティックに影響有りませんというのは影響が出る前に乾きますと言う意味だろう。
実際この中ではダントツに乾きは早かった。
ワコーズスーパージャンボ
ワコーズスーパージャンボ
影響大。中乾性であるのでこの中では気化する速度はホーザンに次ぐ。
ワコーズでは速乾性のBC-9も有る。メーカーでもゴムプラスティックにはBC-9を推奨している。
フィニッシュラインバイクウオッシュ
フィニッシュラインバイクウオッシュ
変化は見られない。残ってもゴムには影響がなさそうである。
スプレータイプは泡状に出てくるので吹き飛ばしてのクリーニングは不可。霧吹きタイプは家庭用洗剤のような使用感。ゴムプラスティックが混じったパーツで形状が複雑な物にはよいと思われる。安い!!!
フィニッシュラインエコテッククリーナー
フィニッシュラインエコテッククリーナー
気化は少ない。作業後はふき取り、または洗浄の必要がある可能性も。
チェーンクリーナーに使用した後にもブロアーで吹くなりの処置をした方がよいだろう。
フィニッシュラインシトラスバイオソルベントディグリーザー
フィニッシュラインシトラスバイオソルベントディグリーザー
エコティック同様気化は少ない。作業後はふき取り、または洗浄の必要がある可能性有り。